現代思想入門|千葉雅也

千葉雅也著「現代思想入門」を読んだので、感じたことをまとめます。

現代思想入門を読もうと思った理由

選書の理由は、以下の3点です。

  • 表紙に「人生が変わる哲学」って書いてあり前から気になっていた
  • 生成AI時代は、哲学や思想が大切になるって耳にしたから
  • 哲学や思想を体系的に学んでみたかったから

現代思想入門・ポイントまとめ

はじめに:P.17 全てを管理しようとすればするほど、わずかな逸脱可能性が気になって不安に駆られるのです。むしろ秩序の撹乱を拒否しないことで不安は鎮まっていく。だから人は恋愛をしたり、結婚したりもするのです。それは秩序をつくるためというより、撹乱要因とともに生きていくことが必要だからでしょう。

これまで「どんどん世界の秩序が正されていく=いいこと」だと思っていた。が、そうすることで「わずかな逸脱」が気になって不安が増す……という視点はなかった。

秩序をつくろうとするより「撹乱されること=人生」くらいに捉えておいた方が生きるのは楽になりそうだし、楽しめそう。

はじめに:P.22 確かに現代思想には相対主義的な面があります。<中略>それはきちんと理解するならば、「どんな主義主張でも好きに選んでOK」なのではありません。そこには、他者に向き合ってその他者性=固有性を尊重するという倫理があるし、また、共に生きるための秩序を仮に維持するということが裏テーマとして存在しています。

「一度秩序を疑うからこそ、共に生きられることの可能性を考え直すことができるのだ」というのが現代思想のスタンスらしい。

共に生きられることの可能性を考え直してみよう!というのは直近で読んだフッサールの「超越論的現象学」や「親子で哲学対話」にも通ずる部分がある気がする。

第一章:P.36 ひとつの定まった状態ではなく、ズレや変化が大事だと考えるのが現代思想の大方針なのです。

同一性(アイデンティティ)ではなく、差異が大切。現代思考を考えるにあたり大切な土台になりそうなのでとりあえずメモ。

第二章:P.71 ドゥルーズ+ガタリの思想は、外から半ば強制的に与えられるモデルに身を預けるのではなく、多様な関係のなかでいろんなチャレンジをして自分で準安定状態を作り出していけ、ということだと言えるでしょう。

準安定状態という言葉が印象的。ガチガチに自己を固定する(安定させる)のではなくて、いろんなことに手を出しながら人生を準安定させていけばいいよ、という教え。

安定が本当に安定なんじゃなくて、少しグラグラして遊びがある状態(準安定)が本当の安定なのかもしれない。

ここまでのまとめ:P.110 デリダを論じる第一章は原理論です。脱構築というのは思考術であり、論法だと思ってください。言葉で考えて議論するときのワザです。

これまで自分を含めて世界を「二項対立」で考えていたんだなぁと気付かされる。自分:会社、善:悪、都会:田舎、など。その方が分かりやすいし、これはいいもの!これはダメなもの!と、世界をクリーンにしやすい。

ここまでのまとめ:P.112 そこから社会問題の具体性へ。「あれはまともな生き方ではない、逸脱だ」と排除する権力関係をまず認識する。そしてそれはたんに強制されているのではなく、人々がみずからの不安から無意識的につくり出した体制であると認識する。

権力は逸脱を排除して、マジョリティに「適応」させようとする。近代は、権力の作動に気づきにくくするような仕組みを発達させてきた……という視点がおもしろい。

こういう仕組みとか歴史的な流れを知ると自分の考えがいかに固定化されていたか、に気付かされる。

第四章:P.133 (このように、哲学を学ぶときには歴史の観点が必要です。人間の思考システムがどう変化していったかを意識する必要があります)

人間の思考システムって変化してたのか…という新しい気付き。そんな視点はなかったし、思考システムなんて昔から一切変わっていないものだとばかり思っていた。

さいごに

現代思想入門、というタイトルだったが「本当に入門編なのか?」と疑ってしまうくらい内容が濃密。正直一度読んだくらいでは到底内容は理解できそうにないので、時間を置いて再読してみたいなと思いました。

  • 一度秩序を疑ってみる(二項対立を脱構築してみる)
  • ひとつの定まった状態ではなく、ズレや変化が大事
  • 人間の思考システムは変化している

これまで「秩序=良いもの」だと思っていたが、本書を読んでいい意味で裏切られた気がしました。「秩序が保たれている状態」「固定化(同一化)されている状態」なんてなくて、もっと流動的に考える必要があるのかと。

以下、二章より一部引用します。

第二章:P.66 重要な前提は、世界は時間的であって、すべては運動のただなかにあるということです。<中略>ドゥルーズによれば、あらゆる物事は、異なる状態に「なる」途中である。

「あらゆる物事は、異なる状態に『なる』途中である」とあるように、今自分が持っている考えや、秩序も時間的であると思います。なので、まずは「ほんとうにそうかな?」とこれまでのものを疑ってみる姿勢を取ってみます。

#現代思想入門 #千葉雅也